ブログやサイトを運営している人にとって、著作権問題というのは、常に意識しておくべき項目です。中には、自分のブログやサイト記事が他サイトにコピペされ、著作権侵害の被害者となる経験をされた人もいるかと思います。
私のケースは、運営している美容ブログの記事が、著作権侵害にあたるという指摘を受けて、50万円を請求されたわけですが、私に言わせれば、「まったくのいいがかり」であったと思っています。その詳細は、ブロガーやアフィリエーターの方にとって参考になるかと思い、公開させていただきます。
なお、特定の個人や団体名は伏せて紹介します。この記事に出てくる自分名や団体名は、すべて仮名です。
ある日突然「著作権侵害」のメール
発端は、私の運営する美容ブログのお問い合わせフォームから送信された、1通のメールです。
はじめまして。NPO法人国際○○○協会事務局のMと申します。当協会は、T.B(英国人美容家、仮名)メソッド日本総代理店です。日本においては当協会に著作権料をお支払い頂いた上で、T.Bメソッドの使用を許可しております。
この度、貴社の記事内で、T.Bメソッドを見つけました。どのような経緯で掲載に至っているか返信頂きたく、ご連絡させていただきました。返信のない場合、法的手続きをとらせて頂きます。
ここで問題になっているのは、ある英国人美容家の美容法を紹介した、私のブログ内の記事です。この記事は、確かに彼女の美容方法を中心として書いていましたが、某外国系出版社のオンライン記事(英語)からの引用をしながら、彼女の美容法を紹介したものでした。
引用方法としても、引用元の表記などの引用に関するポイント(下記に詳しく書いています)は、おさえて執筆したつもりで、著作権にも配慮した構成です。
このコメントを受け取って、まずひっかかったのが、「T.Bメソッド」という美容法に関する著作権という点です。
そもそも、私は、記事中でこの美容家の方の紹介をした際、「T.Bメソッド」という名称すら使ってませんでした。まあ、内容的には、それに含まれるものがあったということなのでしょう。
自分が認識していなかった「XXXメソッド」について、著作権侵害を訴えられて、混乱してしまいました。
確かに、引用を利用した記事だったので、引用元からの著作権を主張される可能性はゼロではありませんが、それならば、引用元の出版社(外国系A社)からの指摘になるはずでは?と思ったんです。
とりあえず当該ページは削除しました
腑に落ちない感はあったものの、面倒を避けるためと、指摘された記事はまったくと言っていいほど経済的に貢献していなかったページなので、「ま、いいか」と思って、そのページそのものをすぐに削除しました(実際に削除後も、そのブログからの収益に変化はありませんでした)。
そして、次のような返信をしました。
ご指摘いただいた記事に関しましては、サイトA(外国系出版社のオンラインページ)の引用を中心として作成したものです。
T.B氏の美容法を紹介する内容の記事にしたつもりで、著作権違反は本意ではありません。誤解を招く記事内容になってしまったようですので、記事は削除させていただきました。すでに表示されなくなっておりますのでご確認ください。
今後も、無断でT.B氏の美容法を紹介することはございません。
それに対する返信が次の通り。
掲載の経緯については承知致しました。しかしながら既に削除済みとはいえ、これまで掲載してきた事実がございます。
記事内には引用先などの記載もなく(注;引用元の記述はありました)、私共はクライアントに技術を提供する際には、監修料を頂戴しており、今回の貴殿のご対応は誠に遺憾であります。
著作権法114条3項に基づく請求として、(一部省略)・・・、合計50万円をお支払い頂きたく、請求書を送付させて頂きたいので送付先をお知らせ願えますでしょうか?
著作権とは何か
このケースで、Mさんが主張しているのは、どうやら「T.Bメソッド」についての著作権のようです。そこに何となく違和感を感じた私は、再度著作権について、復習してみました。
著作権(ちょさくけん)はコピーライト(英語: copyright)とも呼ばれ、言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、コンピュータプログラムなどの表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利である。
引用元;著作権 – Wikipedia
つまり、表現形式によって、創作的にあらわされた著作物に発生するのが「著作権」ということになります。そこで、ひっかかるのが、「○○メソッド」というような方法やアイデアに関する「著作権」の問題です(メソッド「method」は、「方法、方式」という意味の英語です)。
少し掘り下げて著作権というものに関して、調べてみました。
結論から言うと、アイディアや思想、理論そのものは、著作権の対象になりません。これらを出版物や音楽などにより表現して初めて、著作権が発生するということになります。
参考サイト;著作権侵害の要件、著作権よくある質問集
そこで、少し相手の反応を試してみようとこんな返信をしました。
当ページはすでに削除しましたので、確認していただけませんが、引用先として、サイトAのリンク表記をしておりました。(引用元が表記されていなかったという点に関する反論)
また、ご請求の根拠は、T.B氏のアイデアに関する著作権を主張されているという解釈でよろしいのでしょうか。
返ってきたのは、半ギレ気味のお返事でした。
例として引用先等と掲げましたが、今回の記事は引用ではなく盗用に値します。
しかし、この返答から、相手側も法律のプロではないことが分かります。
そこで、
了解しました。
当方の弁護士と相談のうえ、改めてご連絡させていただきます。
と返信して、しばらく時間を置くことにしました。
本当に弁護士に相談してみた
いろいろと著作権のことを調べていく上で、オンラインで弁護士の方に相談できる掲示板なるものを見つけたので、そこで質問をしてみました。
公開されている掲示板なので、個人や団体を特定できるような表現ができず、今回のケースを完全には説明できなかったのですが、質問のポイントとしては次の2点です。
- ○○メソッドというようなアイデアについては、著作権が発生しないという確認
- 著作権侵害を指摘された後、すぐに削除した場合でも損害賠償責任が発生するかどうか
すると、数時間して、ある弁護士の方から返信が来ました(オンラインで弁護士に相談できるなんて、本当に便利な世の中です)!
この2点についての回答を要約すると、次のような感じです。
原則としてアイデアには著作権は発生しません。
連絡後にすぐに削除した場合であっても、損害が発生しているのであれば賠償をする必要があります。ただし、かかる損害をどのように算定・立証するのかは難しい問題であり、損害賠償を請求する側にとってもハードルが高い裁判になるでしょう。
特に、今回のようなすぐに削除しているケースでは、相手方の弁護士であれば、裁判などの法的な権利行使は、お勧めする状況にはないと考えます。
利用したサイト;弁護士ドットコム
引用に関して~正しい引用方法
著作権問題で、よく問題とされるのは、私のケースのように「引用」が用いられている場合が多いと思います。そこで、著作権法に触れない正しい引用方法についても、復習しておきたいと思います。
著作権法では、引用に関して次のような項目があります。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(著作権法第32条)
つまり、いくつかのポイントをおさえて使用すれば、引用は可能ということになります。正しく引用するために気を付けたいことは、次のような点です。
引用の要件
公表された著作物であること 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること 引用部分が明確になっていること 出所の明示がなされていること 引用を行う必然性があること
ここでは、一つずつのポイントについての解説はしませんが、気になる方は引用元のサイトを参照してみてください。
著作権侵害になることを認識していなかった場合
今回の私のケースでは、直感的に、著作権侵害を主張されるのは少し的外れという感じがあります。
相手は「T.Bメソッド」という美容法に関して著作権を主張しています。しかし、相手側の公式サイトを訪れても「T.Bメソッド」に関する表記はなく、私は混乱するばかりでした。
ただ、そのNPO法人の代表者が、以前書籍を執筆していることが確認できました。そのため、百歩譲って、私の記事コンテンツがその方の著作物(書籍)の内容に似通っていたという可能性はあります。
この場合、私は著作権侵害に当たることを認識していなかったことになりますが、そのような場合ではどうなるのでしょうか。
「著作権侵害を指摘されたものが、当初著作権侵害を認識していなかったケース」という観点から、調べると、次のような事例がヒットしました。
無断でアップロードされていることが明らかではない著作物についてリンクを貼ってしまったケース
プロバイダ責任制限法~掲示板にユーザーが書き込んだコンテンツが著作権法に触れていた場合
この2つの事例は、私の今回のケースとは異なるものですで、あくまで今後の参考にしかならないと思います。しかし、自分の覚書もかねて参考として書いておきます。
しばらく放置することにしました
今回のケースで、著作権や引用の方法について、再度勉強しなおすことになりました。それはそれで、私の今後のサイト運営について、有益になることですので良かったと思っています。
ところで、この件は、まだ完全に終了したわけではありません。
最後にこちらから、「弁護士と相談のうえ、改めてご連絡させていただきます」という返信をしてから、放置していたわけですが、先日またメールが来ました。
その後、いかがでしょうか?
本日中にご返信を頂けない場合、告訴の手続きに入りたいと存じます。
お支払い手続き方法につきまして速やかなにご返信を頂けましたら幸いです。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
とのことです。
応戦しようかとも思いましたが、返信してもあまり利益にならないと思うので、しばらく放置してみるつもりでいます。
本当に、相手側が法的手段をとるかもしれませんが、そうなったらそうなったで、またこのブログで追記していけたらと思います。
読者の方へ・・・
なお、著作権についてお悩みの方で、この記事を読まれている読者もいるかもしれません。私は法律のプロではありませんので、ここに書かれている私の記事だけをうのみにして、ご自分の問題に対処しないようにしてくださいね。問題が深刻化しそうな場合は、法律の専門家に相談されることをおすすめします。
また、私のやっていることについて、「それって危険だよ」とか「ちょっとそれ違う・・・」というような点がありましたら、コメントいただけるとありがたいです。
今回は少しタフな内容でしたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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